2011年10月19日水曜日

雲南省長江上流域調査の旅 (その5)

Panzhihua周辺の調査が終わると、Lijiang, Shangri-laへと移動して、揚子江大屈曲(first bendと呼ばれる)より上流域での採水と河川堆積物採取を行った。大屈曲より上流になると、河道は直線的になって河原は余り発達しなくなり、いわゆるV字谷の地形となる。その為、川沿いには大きな町は存在せず、人口百人に満たない小さな集落が点在するのみである。河床の標高は2000mを超えるが、周辺の山々の標高は4000m以上ある為、谷の深さは2000m前後ある事となる。一方、Lijiang, Shangri-laと言った町は山間の盆地にあり、揚子江とは4000m級の山々で隔てられている。その為、揚子江上流に行くには、山を超えてV字谷の斜面を下る、細くて曲がりくねった道を延々と行かなくてはならない。道は一応舗装されているが、小型車がかろうじて行き違える幅しかない所が多く、大型トラックが来ると道の所々にある退避スペースで待たねばならない。また、急な斜面を切り込んで作ってあるので、しょっちゅう崩れるようで、あちらこちらで修復工事を行っている。我々が行った時も、Shangri-laを出てすぐの所で修復工事を行なっていて、ぬかるんで深い輪だちが刻まれた片側車線を使っての交互通行を行なっていた。
中国では、特に地方に行くと、信号を厳密に守るとか、整然と並んで順番を待つとか、道を譲り合うと言った習慣はあまり無いようである。対向車が通り抜け終わる前でも、空きが出来れば反対側で待っていた車が片側通行の車線に入ってゆくし、信号が赤に変わっても前の車について強引に入ってゆく事がしばしばである。この時も我々の車の前を行くツアー客を乗せたワンボックスワゴンが、前の車について片側通行車線に強引に入って行った。一方、反対側で待っていた大型トラックは、ワゴンが完全に抜け切る前に、片側通行車線に入ろうとして、ワゴンと接触したらしいのである。
ほんの子擦り傷程度だが、トラックがぶつけた形となり、運転手同士の口論が始まった。片側車線をふさいだまま、ツアー客を乗せたままでの口論である。どうも、ワゴンの運転手がトラックの運転手に修理代を請求しているらしい。口論は1時間近くも続いた。その間に通行を待つ車の列は伸び続け、示談が成立してワゴン車が道を開けた頃には、片側で100台を超えていた。この道は、東チベットへと続く唯一の幹線道路である為に、物資を積んだ大型トラックの往き来がかなり多いのである。
運転手二人の口論の際には、野次馬が二人を取り囲み、怒号が飛び交ったが、2人はお構いなしで続けていた。野次馬も半分は口論を楽しんでいるようで、本気で怒っている様子ではなかった。その辺りも、恐らくは阿吽の呼吸があるのだろう。あとで聞いた話では、ワゴンの運転手が、トラックの運転手に、最初2万元(30万円)を要求したらしい。法外な要求である。それが1時間かけて500(7500円程度)にまで下げられて示談成立となったとのこと。フッかける率も40倍とは、さすが中国だ。結局、反対側で並んでいた100台あまりの車が全て通り抜け、我々の車が片側通行を通り抜けたのは、口論開始から1時間半余り経った後だった。
こうした事は、中国の田舎を車で旅する時には、よく起こる事で、驚くには当たらない。怒号を飛ばしていた野次馬達も、半ば口論を楽しんでいたのである。しかし、我々には、この1.5時間のロスは大きかった。この日は、採水の後、Shangri-la見物をして、Lijiangまで戻る予定だったからである。結局、Shangri-laの街を見学することなく、Lijiangまでの長いドライブとなった。(つづく)
(多田)

0 件のコメント:

コメントを投稿