2015年8月29日土曜日

週刊葛生 第二十二号 沢露頭編

 みなさんこんばんは。修士2年のMです。

 今週は、沢露頭編です。写真が盛りだくさんなので、さっさと始めちゃいましょう。


 沢は水流で露頭が磨き出されているので、調査に適しています。だから、地質をやる人はよく沢沿いに調査するんです。

七里川・千葉県清澄

 清澄は地質調査を学ぶ良い実習地として有名ですね。東大はここに演習林を持つので、毎年学部生の調査実習をやっています。


河原沢川・埼玉県小鹿野町

 山奥の沢なんかでは、岸が崖になってて露出が良いです。


雁掛沢・埼玉県秩父市

 ただ、そんな所では傾斜も急になるので、移動は大変ですね。


大ガマタ沢・埼玉県秩父市

 基本的に上流の方ほど急でしんどいです。上の写真は荒川水系中津川の最上流部です。


橋掛沢・埼玉県秩父市


鮫沢・埼玉県秩父市


石灰沢・埼玉県秩父市

 こちらはもう源流部で、あまりに急で、水もほとんどないので沢なんだか、ただの崖なんだか。



 それに、上流域では雨が降ると土砂崩れも怖いです。

竜ヶ谷・京都府右京区

 写真じゃ雨はよくわからないかもしれませんが。


 じゃあ、下流の方が良いかって言うとそんな事でもありません。 

中津川・埼玉県秩父市

 下流では水が多く、上の写真みたいな激流では向こう岸の露頭に行けませぬ。

 他方、下流は下流で良いことも有ります。


名もなき沢・埼玉県小鹿野町

 沢の露頭って、このように海岸露頭に比べて露出が少ないイメージが有るかもしれませんが、ある程度下流で水量の多い所なら、海岸にひけを取らない露出が有ったりします。

河内川・神奈川県山北町


赤平川・埼玉県小鹿野町

 こちらは、秩父ジオパークのジオスポット、ようばけの第三系。


荒川・埼玉県長瀞町

 こちらも確かジオスポット、長瀞の赤壁。夕方に夕陽で赤く染まるそうです。岩石自体は緑色片岩で、緑色なんだけどネ。


球磨川・熊本県芦北町


多摩川・東京都奥多摩町


 どうでしょう、沢も悪くないでしょ。




 最後に、沢で見られる私の気に入った風景をいくつか紹介して終わります。


雷川・山梨県山梨市

 こちら、花崗岩を流れる沢に良く見られる滑床です。滑ってみたいですね。


大若沢・埼玉県秩父市

 沢に磨かれて、層状砂岩の縞縞がくっきり。


大山沢・埼玉県秩父市

 個人的に結構気に入っている一枚。層状砂岩の層理面を沢が流れているのが分かります?理由は分かりませんが、好いですな。


豆焼沢・埼玉県秩父市

 写真の急流は、断層帯を流れ落ちているんです。基盤岩が弱い所を沢が削り込んだんですね。自然の造形術です。


川乗谷・東京都奥多摩町

 最後に、やっぱり沢の絶景と言えば滝ですね。写真は、川乗谷の百尋の滝、チャートの岩壁を流れ落ちています。


 いかがだったでしょう?写真がやたら多かったですが、それだけ沢に調査に行くことが多いってことですね。



 それでは、ごきげんよう。さようなら。

2015年8月22日土曜日

週刊葛生 第二十一号 鉱山露頭編

 みなさんこんばんは。修士2年のMです。


 前回は海岸露頭の紹介だったので、今回は



 鉱山露頭です。


鉱山の親方 ダッフィー
from 『天空の城ラピュタ』


 鉱山では、ダイナマイトで岩をぶっ飛ばすので、かなり新鮮な岩石や、自然には露頭になりにくい風化に弱い岩石が露出する事が有ります。常に掘り進められているので露頭がなくなってしまったり、入山に許可が必要だったりと、欠点も有りますが。


 日本にもう鉱山なんてないって思ってる方もいるかもしれません。実はまだまだたくさん有るんです。


 今時何を掘ってるかって?石灰岩ですよ。なぜなら日本には、付加体に含まれる元海山頂部の石灰岩がたっくさん有りますから(付加体を忘れちゃった人はここをクリック!!)。海山頂部のでできた石灰岩は純度が高く、製鉄などに使うのに最適だそうです。

 では、そんなピュアな石灰岩が採れる鉱山を紹介しちゃいましょう!



武甲山(埼玉県秩父市/横瀬町)

 武甲山は秩父盆地を見下ろす石灰岩の山です。マヤのピラミッドみたいですねぇ。ちなみに、掘られていない側は緑色岩、つまり、海山を作っていた玄武岩が変成した岩石だそうです。



叶山(群馬県神流町)

 山がすっぱり削り取られているのは群馬県神流町にある叶山です。すごい事しますね。ちなみに、ここで採った石灰岩は30 km以上ベルトコンベアーに乗って秩父盆地の工場まで行きます。それもすごいですね。


毘沙門山(埼玉県小鹿野町)

 こちらは既に廃鉱となった鉱山です。ちなみに、稼働中の鉱山は許可無しに入ったらダメ絶対ですよ。



 そして、鉱山露頭と言えば忘れてはいけないのが

大釜鉱山(跡)(栃木県佐野市)

 そう、葛生ですよ。葛生は立派な石灰鉱山町です。私の研究した露頭も、鉱山跡の端っこに露出しているんです。



 日本の鉱山は今となってはほとんどが石灰を採っていますが、他にも珪砂を採る所が有ります。


 こちらは大分県東部のどこかしらにある採石場です。手元にノートがないので、詳しい事は分かりません。写真の右の方に入っている白い縞縞は、チャートの間に挟まる遠洋性石灰岩です。これは海山の石灰岩とは違って、深海底に積もったものです。


 今では稼働していなくとも、昔鉱山が有った所には露頭が残っていたりします。そんな所に行くと、日本でも採鉱が盛んだった往時が偲ばれます。代表で一つ。


秩父鉱山道伸窪鉱(跡)(埼玉県秩父市)

 岩が赤いですね。そう、鉄です。ここは磁鉄鉱の露天掘跡だったそうです。今でも日本有数の埋蔵量を誇るとか。なぜ廃鉱になったかは、行けば分かります。



 なんだかうんちくの多い回になってしまいました。

 それでは、ごきげんよう。さようなら。

2015年8月15日土曜日

週刊葛生 第二十号 海岸露頭編

 みなさんこんばんは。修士2年のMです。


 週刊葛生も二十号を迎えました。前もって断っておきますが、二十号だからといってとりわけ面白い内容になる訳ではありません。

 なぜなら、この文章はだいぶ前、津久見に調査に行っていたときに書いたものだからです。当時はこれが二十号で公開されるなんて思ってないですから、気合いの入り方もそんなに大した事ないんですな。


 さて、津久見は海に面したお魚のおいしい町なのですが、調査する露頭も海岸にあるんです。海岸露頭と言えばどういう印象を持ちますか?


 まあやはりなんと言っても、圧倒的露出、では無いでしょうか?

大分県津久見・江ノ浦

静岡県・西伊豆

神奈川県・城ヶ島

オーストラリア・Kioloa


 こんな所では、今まで何度か紹介して来た、調査のための工事はほぼ不要ですな。もしちょっと砂浜を掘ったとしても、すぐ側に無限の水量を誇る大海原があります。


 また、天気も山よりは安定しています。さらに、山では雨が降ると土砂崩れの懸念がつきまといますが、海岸なら山ほどは土砂崩れの心配が無いですね。



 しかし、海岸露頭は良いことばかりじゃありません。まず、これが困ります。

ゴミ

 港が近いから仕方ないんでしょうが、臭いのはいやですなぁ。



 そして何より問題はフナムシですな。筆者は全動物の中で3番目にフナムシが嫌いなのでしんどいです。個人的には実物の写真は閲覧注意になっちゃうので、これで代用。

大海嘯
from『風の谷のナウシカ4』(徳間書店)

 ほんとに、大げさじゃなくてこれくらいいるんです。


 敵は節足動物だけじゃありません。

トンビ

 なぜかノートをとっていると威嚇してきます。俺より先にフナムシを追い払ってくれ。。。

 さらに、場所によっては牡蠣がすごい勢いでへばりついています。



 牡蠣のくっつく力ってすごいんですね。剥がそうとハンマーで叩いたら、牡蠣が付いてた岩が壊れました。しかも殻の端が尖ってて手で触ると痛いし。


 そして、海岸露頭で厄介なのは、潮ですね。特に、津久見での調査先の一つに砂州で本土と繋がった島が有ったのですが、うかうかしてると。



 しかもこんな日に限って、秘密兵器沢足袋を宿に置いて来ちゃった。

 トレッキングシューズで海に突っ込むのか、それとも…?

「ううん ぼくの足の裏は、親方のゲンコツより固いんだ。」
from 『天空の城ラピュタ』

 パズーくん、そういう問題じゃないから。良い子のみなさんはちゃんと諦めて靴を履いて海を渡ってくださいね。



 それでは、ごきげんよう。さようなら。

2015年8月6日木曜日

週刊葛生 第十九号 チャートのぐちゃぐちゃ編

 みなさんこんばんは。修士2年のMです。

 7月は満月が2回有りましたね。


 一方、週刊葛生も2回しか有りませんでした。



 ところで、本日は東大のオープンキャンパスで、地球惑星科学専攻が展示を出す日でした。


我々のブース。

誰かの私物がたくさん展示してあります。

総司令官の黒川さんとマグニチュード-1.92を叩き出した小玉さん。


 例年より展示スペースが広かったのですが、入場者数はどうだったのでしょう?


 さて、今日は展示の一部でも紹介した津久見の深海地層の構造地質クイズをやってみましょう。これをやれば、オープンキャンパスに来られなかった人も雰囲気を味わえるはず!!



 まずは、断層。


 さあ、断層はどこでしょう?




 ここでーす。じゃあ、断層のずれは?



 こんな感じで、A, B, Cの地層がずれています。よく見ると、Bのそうに断層の両側で鉛筆が置いてありますね。そう、はじめから写真に答えが載ってたんです。それに、折れ尺の矢印が断層の変位を示しているという。簡単でしたね。



 さあ、今度は褶曲。


 褶曲なんてないじゃん、って思った?それともこんなの簡単すぎる?答えはこちら。



 では最後に、応用問題です。ヒントは無しで、下の写真の地層のぐちゃぐちゃを直してみてください。







 いずれにせよ、写真だけでやるのは難しいですね。私は現地調査をして答えを知っているのですが。


 それでは、ごきげんよう。さようなら。



 ちなみに最後の答えは、