今週月曜日は,システム科学専攻の博士課程最終学年の学生による中間発表会が開催されました.
午前中最後の発表者は我らが池田さんです.チャートの堆積周期,物質循環の研究成果を発表しました.
(誰も聴衆がいないように写ってしまいましたが,撮影者が最前列で聞いていたためです・・.)
発表のあとには,多くの議論やコメントが寄せられ,さらなる研究の発展が期待できそうです.(高橋)
2011年7月27日水曜日
2011年6月24日金曜日
旅暮らし。(重要なお知らせ)
研究室のメンバー は、研究活動のため国内外の様々な研究機関やフィールドに出かけています。
7月は、下記のような予定があります。
多田教授・斎藤さん、王さんは中国に調査に出かけます。(6月29日ー7月11日)
また、高橋と池田さんは、国際学会参加のためオーストラリアに行ってきます(7月2日−10日)
そして、再び多田教授・久保田さんは国際学会のためスイスに出かけます(7月20日-27日)
学部4年生の皆さんは卒業研究の内容を決めるため興味のある研究室を訪問・見学していることと思いますが、多田教授、高橋と面談を希望の場合は上の出張期間後あるいはe-メールにて対応します。また、研究室の雰囲気等、院生の先輩に聞いてみるのもよいでしょう。
一緒に海外での研究活動にも挑戦するメンバーが増えることを期待しています。
(高橋)
7月は、下記のような予定があります。
多田教授・斎藤さん、王さんは中国に調査に出かけます。(6月29日ー7月11日)
また、高橋と池田さんは、国際学会参加のためオーストラリアに行ってきます(7月2日−10日)
そして、再び多田教授・久保田さんは国際学会のためスイスに出かけます(7月20日-27日)
学部4年生の皆さんは卒業研究の内容を決めるため興味のある研究室を訪問・見学していることと思いますが、多田教授、高橋と面談を希望の場合は上の出張期間後あるいはe-メールにて対応します。また、研究室の雰囲気等、院生の先輩に聞いてみるのもよいでしょう。
一緒に海外での研究活動にも挑戦するメンバーが増えることを期待しています。
(高橋)
大量絶滅発生直後の海洋には窒素同化生物が増加していた
論文紹介です。
Luo, G., Y. Wang, T. J. Algeo, L. R. Kump, X. Bai, H. Yang, L. Yao, and S. Xie (2011), Enhanced nitrogen fixation in the immediate aftermath of the latest Permian marine mass extinction, Geology.
約2億5千200万年前、 ペルム紀末 の大量絶滅後、数百万年間造礁生物の化石記録が途絶え、その代わりに、浅海域では微生物から由来した炭酸塩岩が残されていることが明らかに なっています。これらの堆積物中の有機物の分子化石や同位体記録からも、大量絶滅後の緑色硫黄細菌やシアノバクテリアなどの寄与量が増加したことが示され てきました。
Luo らの研究グループはは、南中国に残る微生物マット石灰岩(Microbialite)を含む二つのペルム紀三畳紀境界層セクション(Taiping、 Zuodeng)より、堆積物中に残るバルクの有機炭素と窒素同位体比を測定しました。この2つの海生層セクションは、microbialiteに岩相が 移り変わるペルム紀末の大量絶滅層準において、有機炭素同位体比の減少とともに3パーミル窒素同位体比が減少することを示しました。このデータは、過去に 研究されたこれらのセクションよりも浅い海域に位置していたと考えられる中国メイシャンセクションの傾向とも一致します。これらの低い窒素同位体比の値 は、微生物窒素同化の寄与量が増加したことを示します。そして、窒素同化(脱窒やアンモニウム酸化)の増加の背景には循環の停滞した無酸素海洋の発達が考 えられます。また、彼らは、窒素サイクルの変動は窒素酸化物(NO2)の放出をもたらし、温暖化の進行に寄与した可能性があると述べています。N2Oの温 暖化に寄与する影響はCO2の〜1000倍だそうです。また、従来、軽い窒素同位対比をもたらした窒素同化生物としてシアノバクテリアがあげられてきまし たが、今回の研究セクションでは、シアノバクテリア由来の分子化石の増加は見いだされなかったそうです。また、無機炭素同位体比と有機炭素同位体比との差 がメイシャンセクションほど減少せず(メイシャンで検出された減少量よりも3-4パーミルほどの差が小さい)、重い炭素同位体比をもたらす緑色硫黄細菌な どの一次生産者が浅いメイシャンの海域よりも研究セクションが記録するより深い(陸から離れた)海域では多くなかったことが考えられます。したがって、窒 素と炭素の同位体比の記録から、大量絶滅直後の微生物の生態系変化は、浅海ー深海で異なっていたと考えられるそうです。(高橋)
Luo, G., Y. Wang, T. J. Algeo, L. R. Kump, X. Bai, H. Yang, L. Yao, and S. Xie (2011), Enhanced nitrogen fixation in the immediate aftermath of the latest Permian marine mass extinction, Geology.
約2億5千200万年前、 ペルム紀末 の大量絶滅後、数百万年間造礁生物の化石記録が途絶え、その代わりに、浅海域では微生物から由来した炭酸塩岩が残されていることが明らかに なっています。これらの堆積物中の有機物の分子化石や同位体記録からも、大量絶滅後の緑色硫黄細菌やシアノバクテリアなどの寄与量が増加したことが示され てきました。
Luo らの研究グループはは、南中国に残る微生物マット石灰岩(Microbialite)を含む二つのペルム紀三畳紀境界層セクション(Taiping、 Zuodeng)より、堆積物中に残るバルクの有機炭素と窒素同位体比を測定しました。この2つの海生層セクションは、microbialiteに岩相が 移り変わるペルム紀末の大量絶滅層準において、有機炭素同位体比の減少とともに3パーミル窒素同位体比が減少することを示しました。このデータは、過去に 研究されたこれらのセクションよりも浅い海域に位置していたと考えられる中国メイシャンセクションの傾向とも一致します。これらの低い窒素同位体比の値 は、微生物窒素同化の寄与量が増加したことを示します。そして、窒素同化(脱窒やアンモニウム酸化)の増加の背景には循環の停滞した無酸素海洋の発達が考 えられます。また、彼らは、窒素サイクルの変動は窒素酸化物(NO2)の放出をもたらし、温暖化の進行に寄与した可能性があると述べています。N2Oの温 暖化に寄与する影響はCO2の〜1000倍だそうです。また、従来、軽い窒素同位対比をもたらした窒素同化生物としてシアノバクテリアがあげられてきまし たが、今回の研究セクションでは、シアノバクテリア由来の分子化石の増加は見いだされなかったそうです。また、無機炭素同位体比と有機炭素同位体比との差 がメイシャンセクションほど減少せず(メイシャンで検出された減少量よりも3-4パーミルほどの差が小さい)、重い炭素同位体比をもたらす緑色硫黄細菌な どの一次生産者が浅いメイシャンの海域よりも研究セクションが記録するより深い(陸から離れた)海域では多くなかったことが考えられます。したがって、窒 素と炭素の同位体比の記録から、大量絶滅直後の微生物の生態系変化は、浅海ー深海で異なっていたと考えられるそうです。(高橋)
2011年6月23日木曜日
300万年前のエルニーニョ南方振動の証拠
D2の久保田です。
論文紹介です。
東赤道太平洋のコア から浮遊性有孔虫を使って温度躍層の経年変動を復元するという手法です。
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赤道域は大量の熱を貯蔵しているので、将来の温暖化に伴いENSOがどう変動するのかは、重要な問題である。その点で、今から300万年前の温暖期は将来の温暖化世界のアナログとして注目されている時代である。先行研究では、恒常的にEl Ninoの状態が続いていたのではないかと言われているが、数年スケールのENSOが存在したのかどうかは明らかにされていなかった。
この研究では、3種類の浮遊性有孔虫を使い、8つのタイムスライスで有孔虫の酸素同位体比の分析を行い経年変動の変動幅を復元した。用いられた種は、生息深度の違うG. ruber, G. minaridii, N. dutertreiである。この3種について個体ごとの酸素同位体比(1種につき40個体)の分析を行っている。
その結果、300万年前にも現在と同様な数年スケールのENSOが存在したことを示唆し、その変動幅も現在と同程度であった。
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Persistent El Niño–Southern Oscillation variation during the Pliocene Epoch
N. Scroxton,S. G. Bonham, R. E. M. Rickaby, S. H. F. Lawrence, M. Hermoso, and A. M. Haywood
PALEOCEANOGRAPHY, VOL. 26, PA2215, doi:10.1029/2010PA002097, 2011
2011年6月11日土曜日
システム講座ガイダンス
本日午後から、大学院入学希望者に対する講座のガイダンスが行われました。
来年、どんなメンバーが加わるか楽しみです。
研究室の紹介は5分間の短い時間に限られていましたので、私たちの研究に興味のある方は是非研究室を見学に来て下さい。
毎週木曜日には、メンバーが集まってランチミィーティングを行っています。研究室の雰囲気が分かると思います。
また、6月17日(金曜日)には、卒論課題のテーマを説明したいと考えています。どちらもお昼12時からですのでのぞいてみてください。
また、個別に多田・高橋のお部屋を訪ねて話をすることも可能ですのでご連絡下さい。
みなさんと一緒に研究できることを楽しみにしています。
来年、どんなメンバーが加わるか楽しみです。
研究室の紹介は5分間の短い時間に限られていましたので、私たちの研究に興味のある方は是非研究室を見学に来て下さい。
毎週木曜日には、メンバーが集まってランチミィーティングを行っています。研究室の雰囲気が分かると思います。
また、6月17日(金曜日)には、卒論課題のテーマを説明したいと考えています。どちらもお昼12時からですのでのぞいてみてください。
また、個別に多田・高橋のお部屋を訪ねて話をすることも可能ですのでご連絡下さい。
みなさんと一緒に研究できることを楽しみにしています。
2011年5月23日月曜日
Clementz & Sewall (2011) Science, 332, 455-458. 過去から見る地球温暖化後の水循環
“Latitudinal gradients in Greenhouse seawater d18O: Evidence from Eocene sirenian tooth enamel”
大気中のCO2濃度が1000ppm(IPCCの 2100年予測)を超える温室世界における水循環はどうなるのだろうか?その答えを求める方法の一つが、過去にそのアナロジーを求める方法である。今から5600~3400万年前にかけての始新世と呼ばれる時代は、大気中のCO2濃度が1000ppmを超え、両極には氷床が存在せず、全球平均気温が現在より12度近く高かった地球史の中で最も新しい温室世界の時代である。こうした遠い過去の時代の水循環は、どの様にしたら調べることが出来るのだろうか?その一つの方法として、緯度方向の海洋表層塩分の勾配を見る方法がある。
現在の海洋表層塩分は、大気の子午面循環の影響を受け、ハドレー循環の上昇部にあたる赤道域では、降水の影響を受けて低塩分の表層水が、下降部では乾燥した大気が地表に吹き付けるため、高塩分の表層水が発達する。そして、ハドレー循環が強まるほど、そのコントラストが増すことが期待される。過去の海洋表層塩分を復元する場合、表層水の酸素同位体比を利用することが多い。それは、降水の酸素同位体比は海水より軽く、一方、蒸発により表層水の塩分と酸素同位体比は上がるからである。しかし、表層水中に棲んでいた石灰質や燐灰質の化石の酸素同位体比を用いて表層水の古塩分を復元するには、同時にその時の水温を知る必要がある。これは必ずしも容易なことではない。
筆者らは、海牛類(哺乳類)の歯のエナメル質の酸素同位体比を用いることにより、巧妙に温度の影響を取り除き、始新世およびそれ以降の緯度方向の表層塩分プロファイルを復元した。すなわち、海牛類の体温が37℃でほぼ一定であることを利用したのである。(この手法は、実は1990年代に、日本の研究者により既に提案されていた。)その結果、特に熱帯収束帯(ITCZ)と亜熱帯高圧帯の間の表層塩分勾配が始新世においてはそれ以降より強く、低緯度域(<30度)がより湿潤な環境にあったことを示した。更に大気循環モデルを用いて、大気中のCO2濃度が800および3000ppmの条件下で、こうした状況が再現されることを確認した。
この研究結果は、温室世界における水循環がより強いハドレー循環とより湿潤な低緯度環境で特徴づけられることを示すものである。また、赤道域がより低塩分化するということは、酸素同位体比に基づいた温室世界におけるこれまでの表層水温推定が過大評価である可能性も示唆する。
(多田)
2011年5月15日日曜日
過去数十万年の南極の気候変動は局地的な日射量変動で説明できる(Laepple et al., 2011, nature)
D2の久保田です。
今日の論文は、nature 3月3日号のLetterから南極の氷床コアについての論文です。
++++++++++
要旨:
雪の酸素同位体比は、水蒸気から雪が凝結するときの気温に依存する。この関係を使って、南極の氷床コアに記録されている氷の酸素同位体比の変動は、南極の気温を反映していると考えられてきた。このようにして復元された南極の気温は南極の夏の日射量変動ではなく、北半球の夏のN65°の日射量変動と相関しており、北半球のN65°の夏の日射量が全球的な気候変動を支配しているというミランコビッチ理論を裏付けるものとされてきた。
しかし、今回の研究では、南極の降雪がどの季節に多いのかを南極のいくつかの基地で観測して調べた結果、南極の積雪量は南半球の夏に少なく、冬に多いことが分かった。この効果(Recording system)を入れて、降雪量を季節的に重み付けし、南極の日射量の変動カーブを計算すると、氷床コアの記録とよく一致していることが分かった。つまり、南極の気温の変動カーブは南極の局所的な日射量変動と相関があるということだ。細かく見れば、特に融氷期で気温変動のカーブよりも積雪量で重み付けされた南極の日射量のカーブがリードしているが、大局的には一致している。また、この積雪効果を入れた日射量のカーブは、前述の北半球の夏の日射量変動のカーブとも一致している。
つまり、南半球のlocalな日射量がたまたま北半球の夏の日射量と一致していたのだ。南半球の氷床コアの記録はミランコビッチ理論を支持すると考えられてきたが、南極の氷床コアのデータの解釈には特に気をつけるべきである。
今回の結果からは、氷期から間氷期の移行には、北半球だけではなく南半球の海氷やCO2の放出源としての南大洋の変動も影響していた可能性が示唆される。
++++++++++
感想:
北半球の日射量が南極も含めた全球的な気候変動を決定しているというミランコビッチの仮説には、北半球の夏の日射量の影響がどのように南半球まで波及するのかまだ完全に分かっていないという欠点があった。大西洋の深層水循環がこの役割を担っているという説が有力だが、まだそのメカニズムは完全には解明されていない。Terminationがどういったメカニズムで起こるのか、とても面白い問題だ。
論文:
Synchronicity of Antarctic temperatures and local solar insolation on orbital timescales
Thomas Laepple, Martin Werner & Gerrit Lohmann
Nature 471, 91–94 (03 March 2011) doi:10.1038/nature09825
今日の論文は、nature 3月3日号のLetterから南極の氷床コアについての論文です。
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要旨:
雪の酸素同位体比は、水蒸気から雪が凝結するときの気温に依存する。この関係を使って、南極の氷床コアに記録されている氷の酸素同位体比の変動は、南極の気温を反映していると考えられてきた。このようにして復元された南極の気温は南極の夏の日射量変動ではなく、北半球の夏のN65°の日射量変動と相関しており、北半球のN65°の夏の日射量が全球的な気候変動を支配しているというミランコビッチ理論を裏付けるものとされてきた。
しかし、今回の研究では、南極の降雪がどの季節に多いのかを南極のいくつかの基地で観測して調べた結果、南極の積雪量は南半球の夏に少なく、冬に多いことが分かった。この効果(Recording system)を入れて、降雪量を季節的に重み付けし、南極の日射量の変動カーブを計算すると、氷床コアの記録とよく一致していることが分かった。つまり、南極の気温の変動カーブは南極の局所的な日射量変動と相関があるということだ。細かく見れば、特に融氷期で気温変動のカーブよりも積雪量で重み付けされた南極の日射量のカーブがリードしているが、大局的には一致している。また、この積雪効果を入れた日射量のカーブは、前述の北半球の夏の日射量変動のカーブとも一致している。
つまり、南半球のlocalな日射量がたまたま北半球の夏の日射量と一致していたのだ。南半球の氷床コアの記録はミランコビッチ理論を支持すると考えられてきたが、南極の氷床コアのデータの解釈には特に気をつけるべきである。
今回の結果からは、氷期から間氷期の移行には、北半球だけではなく南半球の海氷やCO2の放出源としての南大洋の変動も影響していた可能性が示唆される。
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感想:
北半球の日射量が南極も含めた全球的な気候変動を決定しているというミランコビッチの仮説には、北半球の夏の日射量の影響がどのように南半球まで波及するのかまだ完全に分かっていないという欠点があった。大西洋の深層水循環がこの役割を担っているという説が有力だが、まだそのメカニズムは完全には解明されていない。Terminationがどういったメカニズムで起こるのか、とても面白い問題だ。
論文:
Synchronicity of Antarctic temperatures and local solar insolation on orbital timescales
Thomas Laepple, Martin Werner & Gerrit Lohmann
Nature 471, 91–94 (03 March 2011) doi:10.1038/nature09825
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