ラベル kubota の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示
ラベル kubota の投稿を表示しています。 すべての投稿を表示

2011年6月23日木曜日

300万年前のエルニーニョ南方振動の証拠

D2の久保田です。
論文紹介です。
東赤道太平洋のコア から浮遊性有孔虫を使って温度躍層の経年変動を復元するという手法です。
ODP site 846はLawrence et al.(2006, Science)にも載った東赤道太平洋を代表するコアですね。
+++++++++
赤道域は大量の熱を貯蔵しているので、将来の温暖化に伴いENSOがどう変動するのかは、重要な問題である。その点で、今から300万年前の温暖期は将来の温暖化世界のアナログとして注目されている時代である。先行研究では、恒常的にEl Ninoの状態が続いていたのではないかと言われているが、数年スケールのENSOが存在したのかどうかは明らかにされていなかった。
この研究では、3種類の浮遊性有孔虫を使い、8つのタイムスライスで有孔虫の酸素同位体比の分析を行い経年変動の変動幅を復元した。用いられた種は、生息深度の違うG. ruber, G. minaridii, N. dutertreiである。この3種について個体ごとの酸素同位体比(1種につき40個体)の分析を行っている。
その結果、300万年前にも現在と同様な数年スケールのENSOが存在したことを示唆し、その変動幅も現在と同程度であった。
++++++++++
Persistent El Niño–Southern Oscillation variation during the Pliocene Epoch
N. Scroxton,S. G. Bonham, R. E. M. Rickaby, S. H. F. Lawrence, M. Hermoso, and A. M. Haywood
PALEOCEANOGRAPHY, VOL. 26, PA2215, doi:10.1029/2010PA002097, 2011

2011年5月15日日曜日

過去数十万年の南極の気候変動は局地的な日射量変動で説明できる(Laepple et al., 2011, nature)

 D2の久保田です。
今日の論文は、nature 3月3日号のLetterから南極の氷床コアについての論文です。

++++++++++
要旨:
雪の酸素同位体比は、水蒸気から雪が凝結するときの気温に依存する。この関係を使って、南極の氷床コアに記録されている氷の酸素同位体比の変動は、南極の気温を反映していると考えられてきた。このようにして復元された南極の気温は南極の夏の日射量変動ではなく、北半球の夏のN65°の日射量変動と相関しており、北半球のN65°の夏の日射量が全球的な気候変動を支配しているというミランコビッチ理論を裏付けるものとされてきた。
しかし、今回の研究では、南極の降雪がどの季節に多いのかを南極のいくつかの基地で観測して調べた結果、南極の積雪量は南半球の夏に少なく、冬に多いことが分かった。この効果(Recording system)を入れて、降雪量を季節的に重み付けし、南極の日射量の変動カーブを計算すると、氷床コアの記録とよく一致していることが分かった。つまり、南極の気温の変動カーブは南極の局所的な日射量変動と相関があるということだ。細かく見れば、特に融氷期で気温変動のカーブよりも積雪量で重み付けされた南極の日射量のカーブがリードしているが、大局的には一致している。また、この積雪効果を入れた日射量のカーブは、前述の北半球の夏の日射量変動のカーブとも一致している。
つまり、南半球のlocalな日射量がたまたま北半球の夏の日射量と一致していたのだ。南半球の氷床コアの記録はミランコビッチ理論を支持すると考えられてきたが、南極の氷床コアのデータの解釈には特に気をつけるべきである。
今回の結果からは、氷期から間氷期の移行には、北半球だけではなく南半球の海氷やCO2の放出源としての南大洋の変動も影響していた可能性が示唆される。

++++++++++
感想:

北半球の日射量が南極も含めた全球的な気候変動を決定しているというミランコビッチの仮説には、北半球の夏の日射量の影響がどのように南半球まで波及するのかまだ完全に分かっていないという欠点があった。大西洋の深層水循環がこの役割を担っているという説が有力だが、まだそのメカニズムは完全には解明されていない。Terminationがどういったメカニズムで起こるのか、とても面白い問題だ。


論文:
Synchronicity of Antarctic temperatures and local solar insolation on orbital timescales

Thomas Laepple,  Martin Werner & Gerrit Lohmann
Nature 471, 91–94 (03 March 2011) doi:10.1038/nature09825

2011年4月15日金曜日

ブログの開設

多田&高橋研究室メンバーD2の久保田好美です。
今年度から新たに研究室の公式ブログを開設したいと思います。
よろしくお願い致します。