皆様ほぼ2週間ぶりです。烏田です。
投稿頻度は自分の忙しさと逆相関なので、
カラスダは忙しかったんだなーと思って頂けると幸いです。
そして忙しかった理由の一つは
水月湖の掘削が無事に終了し、そのお片づけに追われていたことにあります。。
お伝えが遅くなりましたが、改めまして
7/5日から始まりました水月湖での掘削が8/11をもちまして無事に終了しました!!
そして当初の多田先生が計画された
「湖底下40mの堆積物をSG06と同じクオリティで完全連続採取を行う」
という目標につきましても、
中川先生監修の元、M1の鈴木君のSG06との対比作業により無事に達成されました!
この裏では最終日に西部試錐さんのご好意でエクストラでコアを採取して頂き、そのコアの対比作業によって真の意味で完全連続試料が採取できた背景があります。
今回の掘削については私は今年の2月から本格的に準備に携わり始め唯一の全日程参加という本当に現場の最前線にいさせて頂きましたが、
特に掘削が始まってからは共同研究者の人達や、若狭町縄文博物館の方々、そして掘削業者さんである西部試錐さんなど本当に多くの人達の努力と労力と助けの元でこの計画が無事に完遂(分析はこれからですが・・)できたことを強く実感しております。
実をいうと私はこの水月湖の掘削にはアルバイトという形で参加しており、最初は「まぁアルバイトだから・・」という弱冠引いた立場でいました。
しかし水月湖の掘削が近づくにつれて、どんどんのめり込んでしまい最終的には多田先生に
「あなたの研究は水月湖ではないからこれ以上のめり込むな」
というおしかりのメールが来る程にのめり込んでしまいました(笑)
水月湖の掘削が終了してから自分がなぜここまでのめり込んでしまったのか改めて考えていたのですが、
①世界最前線のクオリティで研究を進められている中川先生の研究姿勢を直に体験することができたこと
②実際に堆積物を見ながらサイエンスとしてとても面白い話題に常に触れられることができたこと
③多くの人達が集まって協力をして一つの目標に向かって作業を行う体験ができたこと
の三つが大きかったのかなと感じています。
特に③については掘削前には想像もつかない程重要で貴重な体験ができました。
その中でのめり込んだ一番の理由は③の体験の中で「ここまで色んな方の助けがあって水月湖の掘削が進んでいるから、絶対に成功させなければならない!」という気持ちが一番強かった気がします。
自分はこれにて水月湖に大きく関わることがなくなりますが、自分のこれからの研究生活で今回の体験を活かしていきたいと思いますしここでの体験をきちんと伝えていきたいと思っています。
皆様本当にありがとうございました。
現在水月湖で採取されたサンプルは東大でこのような形で保存されており、これからM1の鈴木君やJAMSTECの長島さんを筆頭に分析がこれから進んでいきます。
分析によって新たに面白いことが分かりましたら彼ら自身に紹介してもらったり自分がブログで紹介できたらと思います。
では最後に多田先生お気に入りの写真で締めたいと思います。ちなみに私は2を描いています(笑)
2012年8月24日金曜日
2012年8月10日金曜日
水月湖の先行研究(2)-SG06
みなさんおはようございます。
烏田でございます。
やはり終盤に近くなると疲れが出て来ますね。
自分もブログを更新しようとする前についつい寝てしまうことが多いです。
では前回からの続きを書きたいと思います。
前回までは水月湖でのSG06に至る所まで話しました。
今回はSG12にも参加して下さっている中川先生が行われた2006年の掘削に焦点を当てます。
まず中川先生は前回のコアで得られた結果について2つの問題点(1:放射性炭素, 2:コアの欠損)を考えました。
そして 2: コアの欠損 に非常に大きな問題があるとの結論に辿り着きました。
堆積物のコア採取をやられた事ない方には分からないと思いますが(自分もこちらに来るまで知らなかった・・)湖や海などで堆積物を連続採取時にどうしても欠損が生じてしまうのです。
これは堆積物を取り上げる時に真空が発生してしまうことが原因となっています。
ヘタクソな図ではありますが、 引き上げ時に元堆積物があったスペースが空洞になって真空が発生します。この真空発生は今回の掘削を行われた西部試錐さんも掘削中に真空の発生を抑える方法を色々試されるように掘削時には免れません。
そしてこの真空の悪い所は路肩や直下の堆積物を乱してしまうことにあります。そのため連続的な試料を取ることがこれまでかないませんでした。
この大きな問題に対して、中川先生はあるアプローチを試みました。
それは「掘削深度を微妙にずらしたコアを同じ箇所で複数本回収する」というものでした。
コンセプトとしては欠損部分を他のコアを使うことで補うというものです。
これには水月湖の堆積物に年縞があること、また多数の洪水や地震によると思われる特徴的なイベント層が多数あるため、異なるコアの対比が容易であることも利用しての方法です。
上の画像は(Nakagawa, 2012)からの一部抜粋でSG06で行われた実際のコア対比例になります。違うコアでも白いいくつかのイベント層が綺麗に揃うことが分かると思います。
そしてこの作業を延々と繰り返すことによってSG06では70m以上におよぶ完全連続層序を実現しました!
今回の掘削(SG12)では40m程度の掘削を行っているのですが、この対比が非常にやっかいです。。
今回は中川先生の指導の元M1の鈴木君がこの比較作業をしていましたが、掘削時は常に堆積物と向き合って堆積物の記載を行い、ホテルに帰っても比較とコアの連続性の確認を行っていました。本当にすごい作業量です。
さらに中川先生達はこのSG06にて年縞数えについても
堆積物薄片による目視でのカウントとXRFスキャナーによる化学的な年縞カウントの2つの方法を用いて改めて厳密に測定を行われました。
数は7万枚。。はてしなく遠い数ですが、このSG06ではこの年縞の数えが本当に行われました。
さらにさらに中川先生達は前回の問題点である放射性炭素年代についても、一つ一つの機械による誤差をなくすために2つの研究室測定を行いました。
数は合計800箇所以上(前回の3倍以上のデータ数)。
まさに狂っていると言ってもいいレベルの数の測定をされました。
このクレイジーな精度で行われたSG06の結果は見事先月(7/13日)に世界に認められて、
来年から使用される放射性炭素年代の較正データ(Intcal)に正式に採用されることが決定しました!!!
そしてこのデータには前回認められなかった北川先生のデータも含まれています。これは中川先生が丹念にSG06と北川先生のコアの比較を行われた結果です。
実はこのニュースは水月の掘削作業時に聞かされたのですが、本当にその時の中川先生の表情が忘れられません。実は中川先生は93年の掘削時に学生として参加されており、関わり始めて実に20年近くの時が立って遂に水月湖のすばらしさが認められたことになります。
あの表情は研究生活が数年も経っていない自分には想像できない色々な感情があったのだと思います。
こうして見事に前回のリベンジを果たして世界に認められた水月湖の堆積物ですが、この世界に認められたことで非常に強いアドバンテージを持ちました。
それは水月湖の堆積物が「地質時代の時代決定基準」になったということです。
これがどれほどの強さかというと例えるならばイギリスのグリニッジ天文台(世界の時計の標準地)が水月湖に来たと言っても過言ではありません。
古気候研究は簡潔に言えば「どこで」「いつ」「何が」起きたかを知る研究です。
そして他の研究との比較の際「いつ」が常に問題になる学問であります。
この「いつ」の基準が水月湖になったのですからこのアドバンテージについて少しはお分かり頂けましたでしょうか?
このアドバンテージの重要性に気付き、さらに水月湖の研究を発展をさせたいというのが今回SG12の位置づけになります。ではこのSG12で何をやるのかについてはまた次回ということにしましょう。
ではでは。
烏田でございます。
やはり終盤に近くなると疲れが出て来ますね。
自分もブログを更新しようとする前についつい寝てしまうことが多いです。
では前回からの続きを書きたいと思います。
前回までは水月湖でのSG06に至る所まで話しました。
今回はSG12にも参加して下さっている中川先生が行われた2006年の掘削に焦点を当てます。
まず中川先生は前回のコアで得られた結果について2つの問題点(1:放射性炭素, 2:コアの欠損)を考えました。
そして 2: コアの欠損 に非常に大きな問題があるとの結論に辿り着きました。
堆積物のコア採取をやられた事ない方には分からないと思いますが(自分もこちらに来るまで知らなかった・・)湖や海などで堆積物を連続採取時にどうしても欠損が生じてしまうのです。
これは堆積物を取り上げる時に真空が発生してしまうことが原因となっています。
ヘタクソな図ではありますが、 引き上げ時に元堆積物があったスペースが空洞になって真空が発生します。この真空発生は今回の掘削を行われた西部試錐さんも掘削中に真空の発生を抑える方法を色々試されるように掘削時には免れません。
そしてこの真空の悪い所は路肩や直下の堆積物を乱してしまうことにあります。そのため連続的な試料を取ることがこれまでかないませんでした。
この大きな問題に対して、中川先生はあるアプローチを試みました。
それは「掘削深度を微妙にずらしたコアを同じ箇所で複数本回収する」というものでした。
コンセプトとしては欠損部分を他のコアを使うことで補うというものです。
これには水月湖の堆積物に年縞があること、また多数の洪水や地震によると思われる特徴的なイベント層が多数あるため、異なるコアの対比が容易であることも利用しての方法です。
上の画像は(Nakagawa, 2012)からの一部抜粋でSG06で行われた実際のコア対比例になります。違うコアでも白いいくつかのイベント層が綺麗に揃うことが分かると思います。
そしてこの作業を延々と繰り返すことによってSG06では70m以上におよぶ完全連続層序を実現しました!
今回の掘削(SG12)では40m程度の掘削を行っているのですが、この対比が非常にやっかいです。。
今回は中川先生の指導の元M1の鈴木君がこの比較作業をしていましたが、掘削時は常に堆積物と向き合って堆積物の記載を行い、ホテルに帰っても比較とコアの連続性の確認を行っていました。本当にすごい作業量です。
さらに中川先生達はこのSG06にて年縞数えについても
堆積物薄片による目視でのカウントとXRFスキャナーによる化学的な年縞カウントの2つの方法を用いて改めて厳密に測定を行われました。
数は7万枚。。はてしなく遠い数ですが、このSG06ではこの年縞の数えが本当に行われました。
さらにさらに中川先生達は前回の問題点である放射性炭素年代についても、一つ一つの機械による誤差をなくすために2つの研究室測定を行いました。
数は合計800箇所以上(前回の3倍以上のデータ数)。
まさに狂っていると言ってもいいレベルの数の測定をされました。
このクレイジーな精度で行われたSG06の結果は見事先月(7/13日)に世界に認められて、
来年から使用される放射性炭素年代の較正データ(Intcal)に正式に採用されることが決定しました!!!
そしてこのデータには前回認められなかった北川先生のデータも含まれています。これは中川先生が丹念にSG06と北川先生のコアの比較を行われた結果です。
実はこのニュースは水月の掘削作業時に聞かされたのですが、本当にその時の中川先生の表情が忘れられません。実は中川先生は93年の掘削時に学生として参加されており、関わり始めて実に20年近くの時が立って遂に水月湖のすばらしさが認められたことになります。
あの表情は研究生活が数年も経っていない自分には想像できない色々な感情があったのだと思います。
こうして見事に前回のリベンジを果たして世界に認められた水月湖の堆積物ですが、この世界に認められたことで非常に強いアドバンテージを持ちました。
それは水月湖の堆積物が「地質時代の時代決定基準」になったということです。
これがどれほどの強さかというと例えるならばイギリスのグリニッジ天文台(世界の時計の標準地)が水月湖に来たと言っても過言ではありません。
古気候研究は簡潔に言えば「どこで」「いつ」「何が」起きたかを知る研究です。
そして他の研究との比較の際「いつ」が常に問題になる学問であります。
この「いつ」の基準が水月湖になったのですからこのアドバンテージについて少しはお分かり頂けましたでしょうか?
このアドバンテージの重要性に気付き、さらに水月湖の研究を発展をさせたいというのが今回SG12の位置づけになります。ではこのSG12で何をやるのかについてはまた次回ということにしましょう。
ではでは。
2012年8月5日日曜日
水月湖の先行研究(1)-SG06に至るまで
どうも。またしても烏田です。
追われているものが終わり更新頻度上げようと思ったら、
色々疲れが出て睡眠してばかりでした(笑)
明日で丸々一ヶ月になりますしね。少しづつ疲れが出てくる時期だとは思います。
ではでは今日は前の記事で書けなかった部分のお話を消化していきましょう。
ちょっと長くなるかもなのでご注意を。
今日は水月のこれまでの研究掘削の話。
先日の記事(ツアーと取材を参照のこと)で水月湖の研究が貝塚の研究から始まったことはお話したと思います。
その時は貝塚に近い三方湖で掘削が主に行われていたのですが、掘削の時間とお金が余ったため隣りの水月湖で掘削をすることになり、そこで初めて水月湖の年縞か発見されました。1993年のことになります。
これは水月湖が
①水の流入がほぼ三方湖からで、河川からの泥が三方湖でほとんど落ちた後に水月湖に流入することで泥の流入が極端に少ないこと
②断層湖なため水深が深いこと
この2つの条件を満たしているために主に形成されます。
この条件を満たしているため
(1)季節による異なった種類の堆積物(珪藻などの生物死骸や黄砂、川からの泥など)が綺麗に堆積される(普通の湖では河川からの泥がとても多いため難しい)
(2)水深が深いため湖が成層化を起こして湖底が貧酸素の環境になり、湖底に生物、酸素がないため有機物の分解や生物による湖底のかき乱しがなくなる
という特殊な環境が形成されます。
そのため季節により異なる堆積物(各季節により色が異なる)がかき乱されることなく綺麗に保存されるため年縞が水月湖で確認された訳です。
そしてこの年縞はおよそ7万年(7万枚)近い時代までさかのぼることが出来ることが分かりました。
しかし当初この美しい年縞をどういう形で研究に活かすかが誰にも分かりませんでした。
が、この年縞を「年代の補正」に用いることが可能であるということに現 名古屋大学教授の北川先生が気付かれ、先生は水月湖のサンプルを用いて年代の補正を行うことを試みました。
この「年代の補正」という部分に?となる人が多いと思います。
過去の歴史or地質研究を行う人にとって「年代」は常につきまとう大きな問題です。
年代が分からないと堆積物の記録から発見された変動の意味が分かりませんし、かつ他の地域の記録との比較ができません。
ですので年代決定は研究の上で非常に大きなポイントになるのですが、この算出が実はやっかいなのです。
特に過去5万年の年代算出には14C(放射性炭素)年代がよく使用されるのですが、この放射性炭素を用いた年代算出にはいくつかの仮定が入っています。
それは
①放射性炭素量が現在と過去で同じである
②14C年代を求める際に慣例的に使用されている放射性炭素の半減期(5,568年)が実際の半減期(5,730年)と異なる
③14Cは様々な炭素リザーバーの間を行き来しており、大気中の14Cが一定の定常状態に達しないため
という仮定です。
しかし、これはこれまでの研究で仮定が間違っていることが判明しているためよりよい年代を出すために補正を行わなければなりません。
(一応参考に・・ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E7%82%AD%E7%B4%A0%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E6%B8%AC%E5%AE%9A)
ここに水月湖の年縞が役に立つ訳です。
水月湖は年縞の数を一番上から下に数えるだけで暦年代が分かります。
単純に2000枚あれば2000年前という形で。
そしてその場所の放射性炭素年代を測ると1940年などという多少ずれた値がでます。
この差こそが上に述べた仮定から発生した年代誤差になるわけです。
ここから縞の数数えと放射性炭素の同時測定によって放射性炭素年代誤差の補正が可能になりました。
北川先生は3年もの時間をかけて縞数え(45000枚)と放射性炭素年代の測定(250点以上)を行われてその成果はscienceの論文として世界に公表されました。
http://www.sciencemag.org/content/279/5354/1187
この成果は非常にインパクトがあり放射性炭素年代の較正データ(Intcalと呼ばれるデータセット)に載る予定でした。
しかし北川先生のデータが反映されることはありませんでした。
これは北川先生の出されたデータについて一部他の同様な研究結果には見られない特徴があったことと 北川先生の使用された水月湖のコアが一部欠損が存在し、その欠損の評価に問題があったことが大きな理由となっています。
そのため水月湖の研究が一時期行き詰まってしまいます。
この行き詰まった状況を新たに打破されたのが先日から名前が沢山でているニューカッスル大学の中川先生になります。
前回の反省点を踏まえて水月湖にどういう形で2006年の再掘削(SG06)に挑んだかについてはまた長くなりますので次回に持ち越しということで。
ではでは。
最後に参考文献をば。
水月湖の年縞:過去7万年の標準時計
www2.jpgu.org/publication/jgl/JGL-Vol6-4.pdf
INTCALのお話(横山研のD1窪田君のブログより)
http://palaeo-kuroneko.blogspot.jp/2012/07/intcal.html
追われているものが終わり更新頻度上げようと思ったら、
色々疲れが出て睡眠してばかりでした(笑)
明日で丸々一ヶ月になりますしね。少しづつ疲れが出てくる時期だとは思います。
ではでは今日は前の記事で書けなかった部分のお話を消化していきましょう。
ちょっと長くなるかもなのでご注意を。
今日は水月のこれまでの研究掘削の話。
先日の記事(ツアーと取材を参照のこと)で水月湖の研究が貝塚の研究から始まったことはお話したと思います。
その時は貝塚に近い三方湖で掘削が主に行われていたのですが、掘削の時間とお金が余ったため隣りの水月湖で掘削をすることになり、そこで初めて水月湖の年縞か発見されました。1993年のことになります。
これは水月湖が
①水の流入がほぼ三方湖からで、河川からの泥が三方湖でほとんど落ちた後に水月湖に流入することで泥の流入が極端に少ないこと
②断層湖なため水深が深いこと
この2つの条件を満たしているために主に形成されます。
この条件を満たしているため
(1)季節による異なった種類の堆積物(珪藻などの生物死骸や黄砂、川からの泥など)が綺麗に堆積される(普通の湖では河川からの泥がとても多いため難しい)
(2)水深が深いため湖が成層化を起こして湖底が貧酸素の環境になり、湖底に生物、酸素がないため有機物の分解や生物による湖底のかき乱しがなくなる
という特殊な環境が形成されます。
そのため季節により異なる堆積物(各季節により色が異なる)がかき乱されることなく綺麗に保存されるため年縞が水月湖で確認された訳です。
そしてこの年縞はおよそ7万年(7万枚)近い時代までさかのぼることが出来ることが分かりました。
しかし当初この美しい年縞をどういう形で研究に活かすかが誰にも分かりませんでした。
が、この年縞を「年代の補正」に用いることが可能であるということに現 名古屋大学教授の北川先生が気付かれ、先生は水月湖のサンプルを用いて年代の補正を行うことを試みました。
この「年代の補正」という部分に?となる人が多いと思います。
過去の歴史or地質研究を行う人にとって「年代」は常につきまとう大きな問題です。
年代が分からないと堆積物の記録から発見された変動の意味が分かりませんし、かつ他の地域の記録との比較ができません。
ですので年代決定は研究の上で非常に大きなポイントになるのですが、この算出が実はやっかいなのです。
特に過去5万年の年代算出には14C(放射性炭素)年代がよく使用されるのですが、この放射性炭素を用いた年代算出にはいくつかの仮定が入っています。
それは
①放射性炭素量が現在と過去で同じである
②14C年代を求める際に慣例的に使用されている放射性炭素の半減期(5,568年)が実際の半減期(5,730年)と異なる
③14Cは様々な炭素リザーバーの間を行き来しており、大気中の14Cが一定の定常状態に達しないため
という仮定です。
しかし、これはこれまでの研究で仮定が間違っていることが判明しているためよりよい年代を出すために補正を行わなければなりません。
(一応参考に・・ http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%94%BE%E5%B0%84%E6%80%A7%E7%82%AD%E7%B4%A0%E5%B9%B4%E4%BB%A3%E6%B8%AC%E5%AE%9A)
ここに水月湖の年縞が役に立つ訳です。
水月湖は年縞の数を一番上から下に数えるだけで暦年代が分かります。
単純に2000枚あれば2000年前という形で。
そしてその場所の放射性炭素年代を測ると1940年などという多少ずれた値がでます。
この差こそが上に述べた仮定から発生した年代誤差になるわけです。
ここから縞の数数えと放射性炭素の同時測定によって放射性炭素年代誤差の補正が可能になりました。
北川先生は3年もの時間をかけて縞数え(45000枚)と放射性炭素年代の測定(250点以上)を行われてその成果はscienceの論文として世界に公表されました。
http://www.sciencemag.org/content/279/5354/1187
この成果は非常にインパクトがあり放射性炭素年代の較正データ(Intcalと呼ばれるデータセット)に載る予定でした。
しかし北川先生のデータが反映されることはありませんでした。
これは北川先生の出されたデータについて一部他の同様な研究結果には見られない特徴があったことと 北川先生の使用された水月湖のコアが一部欠損が存在し、その欠損の評価に問題があったことが大きな理由となっています。
そのため水月湖の研究が一時期行き詰まってしまいます。
この行き詰まった状況を新たに打破されたのが先日から名前が沢山でているニューカッスル大学の中川先生になります。
前回の反省点を踏まえて水月湖にどういう形で2006年の再掘削(SG06)に挑んだかについてはまた長くなりますので次回に持ち越しということで。
ではでは。
最後に参考文献をば。
水月湖の年縞:過去7万年の標準時計
www2.jpgu.org/publication/jgl/JGL-Vol6-4.pdf
INTCALのお話(横山研のD1窪田君のブログより)
http://palaeo-kuroneko.blogspot.jp/2012/07/intcal.html
2012年8月2日木曜日
8月
M3のカラスダです。お久しぶりの投稿ですね。
最後にこのブログに投稿をしてから水月湖のサンプリングに加え、先週末の日中共同のワークショップやら来年多田先生がco-chiefとして執り行われるIODPの日本海掘削の乗船希望提出やら色々とスケジュールがかぶってしまい、投稿が難しい状況でした。。
個人的に山場を超えた+お伝えしたいことが沢山あるので
これからは掘削終了時までできるだけお伝えできればと思います。
そして気づけば暦は8月・・・
サンプリングを行っていると本当に時間が過ぎるのが早いです。
掘削も来週始めには終了する予定なため、締めに向けて最終的な詰めの段階に徐々に入って来ました。
前回取られた水月湖のコア(2006年に中川先生が掘削されたもの)との比較より今回のコアも完全連続なサンプリング(現在~およそ5万年前)が出来そうなので一安心といった所です。
じゃあ明日に備えて今日は軽めで。
一応おまけで更新しなかった時に撮影した写真の一部をアップしますねー。
暑い日が本当に続いていますのでみなさんもご自愛ください。では。
最後にこのブログに投稿をしてから水月湖のサンプリングに加え、先週末の日中共同のワークショップやら来年多田先生がco-chiefとして執り行われるIODPの日本海掘削の乗船希望提出やら色々とスケジュールがかぶってしまい、投稿が難しい状況でした。。
個人的に山場を超えた+お伝えしたいことが沢山あるので
これからは掘削終了時までできるだけお伝えできればと思います。
そして気づけば暦は8月・・・
サンプリングを行っていると本当に時間が過ぎるのが早いです。
掘削も来週始めには終了する予定なため、締めに向けて最終的な詰めの段階に徐々に入って来ました。
前回取られた水月湖のコア(2006年に中川先生が掘削されたもの)との比較より今回のコアも完全連続なサンプリング(現在~およそ5万年前)が出来そうなので一安心といった所です。
じゃあ明日に備えて今日は軽めで。
一応おまけで更新しなかった時に撮影した写真の一部をアップしますねー。
暑い日が本当に続いていますのでみなさんもご自愛ください。では。
登録:
投稿 (Atom)