“Weakening of the equatorial Atlantic cold tongue over the past six decades”
赤道域の海洋は、地球のヒートエンジンであり、赤道の高水温領域は赤道域の降水帯(ITCZ)の位置を規定しているので、赤道域のSSTの時空変動とその制御要因を知る事は重要である。しかし、大気海洋結合GCMは、これまでのところ、(大西洋)赤道域のcold tongue(赤道湧昇のため海洋の東縁に形成される舌状冷水域)や貿易風をうまく再現できていない。そこで、著者らは、大西洋赤道域の過去60年間の観測データを再解析して特に東西海域のSST勾配の指標(ΔSSTeq)を調べ、ここ60年間でcold tongueが弱まるとともに年年変動の振幅も小さくなっていること、特に夏においてその傾向が著しいこと、特に東赤道大西洋において温度躍層の水深が深くなってきていること、同じく東赤道大西洋で貿易風が弱まってきていること、を示した。これは、Atlantic-Ninoが弱まっていることを意味する。また、こうした変化の結果、雲が多い領域や降水域が南にシフトしており、それはITCZの南へのシフトを意味する。こうした変化を引き起こした原因としてAMOC(大西洋における海洋による緯度方向の熱遠循環)の変動は考えづらく、GCMによるシミュレーション結果を元に、人為的なエアロゾル(特に硫酸エアロゾル)による可能性が高いと結論付けている。
人間活動の気候への影響はCO2だけではなく、たとえばエアロゾルの影響も無視できないようである。
(多田)
(多田)
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