2016年9月17日土曜日

週刊葛生 第四十六号 地質学会秩父帯北帯巡検編

 みなさんこんばんは。博士1年のMです。


 今回は、大釜大工事後編、ではなく、つい先日行われた地質学会の巡検の話です。大釜の工事は、また進展があったら続報を。


 さて、9月10日から12日まで私も参加した地質学会が桜上水で開催されたのですが、地質学会は毎年開催地の周辺地方で巡検が行われます。その巡検先の一つが私も良く行く秩父の秩父帯北帯と言うことで、これは参加しないわけにはいかない。


 はじめに全体の感想を言ってしまうと、もうとにかく有意義な時間でした。東京に引きこもりがちな我が大学の人間にとっては、秩父帯北帯というちょっとややこしい地質にフィールドで真摯に向き合い続ける方々と時間が共有できるのは貴重な体験です。人数は少なかったのですが、かえって一人一人の参加者と良くお話ができて最高でした。

 さてさて、らしくない解説文はこれくらいにして、写真で紹介して行きましょう。

 まずいきなり、荒れ気味の道を沢まで降りて行きます。

なかなか普通の人にはついて来れない巡検かもしれない。

 地質構造がぐちゃぐちゃな付加体の調査は、とにかくありとあらゆる沢をつめまくるのが基本なので良くある光景ですし、巡検参加者は皆付加体で研究をする少数精鋭。と言うことで何ら問題無し。

直前まで降っていた雨で沢が増水。

 まずは、変形激しい泥岩の露頭を観察します。ところが、雨で沢が増水しているため、露頭は対岸から。まあ、遠くから観察するべきですね。まずは。


 つぎに、これは巡検のハイライトですが、群馬県の埼玉県境近くにある叶山鉱山です。普段は入れない石灰鉱山を中から見られました。

叶山鉱山の採鉱場。
ダンク!!

 この穴に、採掘した石灰石を落として行き、それが下で回収されて、ベルトコンベアーで工場まで20 km以上運ばれて行きます。

筑波大学の久田健一郎先生(左から2番目)と冨永紘平くん(右から2番目)

 こちらは、巡検案内者の冨永くんと久田先生。とても段取りよく解説してもらいました。

 ちなみに実はこの鉱山、以前に週刊葛生で紹介したこともあるんですよ(プッシュ)!

 次に、鉱山の北側の沢に向かいましたが、ここでは断層で切られた石灰岩の北縁と、それに接する泥岩や玄武岩を見ました。
左の石灰岩の橋に沿って沢が流れる。


 そして初日を終え、小鹿野町の温泉で一泊。

100人以上泊まれるらしい。


 そして翌日は、まずは浦山ダムを見学。全国で2番目に高い重力式コンクリートダムだそうです。
下から見上げる浦山ダム。
ここから入り、エレベーターで上がれる。


 この後周辺の地質の見学もしたのですが、ダムができる前には奇麗な沢が流れていて、そこを調査したものだと、久田先生が懐かしげに話されていました。そして、ダム建設に当たってはそうして調べられた地質の情報もかなり重要な役目を果たしたそうです。
ダムの上から眺める秩父盆地。

 その後、今度は皆野町の沢で露頭を観察します。この辺りは、秩父高校の関根一昭先生たちが沢と言う沢を歩き倒しておられるそうです。
『滝と指導教員』

冨永くんと久田先生。なんだか良い師弟関係。

 山が低いとはいえ、何とも骨の折れる作業です。さらに、年代を決める示準化石の放散虫を石から抽出するのにもたいそう苦労されたとか。
こんな露頭まで丹念に調べて放散虫を絞り出す。


 そして、最後に向かったのは小川町の露頭。これまたとんでもないところにありました。
斜面上に突然現れる露頭。人物は秩父高校の関根一昭先生。

 しかし、個人的にはこの藪の中に隠れた露頭には何とも秩父を感じ、テンションが上がりました。


 毎年、地質学会は結構楽しいですね。

 それでは、ごきげんよう。さようなら。